補聴器外来


ガルニエ宮・オペラ座  撮影:2010年12月

難聴で困っているが、補聴器についてよくわからない。実際に使用して効果を試したい。補聴器を購入したが、音がうるさいばかりで何を言っているのか、さっぱり聞き取れない。こういう訴えは実に多く、しかも解決に至っていない症例に 度々遭遇します。補聴器は、眼鏡やコンタクトレンズの処方箋のように簡単ではなく、まして検査もせず、誰かがどこかの量販店などで購入したのでは、うまく行くはずはありません。適切な補聴器の選択と調整がなければ、何十万円も 無駄になってしまいます。当院の補聴器外来では、新しく補聴器を作成する方、他で補聴器を作成したが効果が得られない方、難聴が軽度だが、会議の時に聞き取りが今一で補聴器を実際に試用して効果を確かめたい方など、補聴器に関係したさまざまな症例を扱います。

難聴の盲点 ‥‥ 高齢者の場合、意外と本人は困っていないことがあります1〜2)

耳鳴りの無い難聴者は、静寂の世界で暮らしています。補聴器を装用するという事は、日常生活の様々な雑音(暗騒音)のある世界へ再び引き戻す事でもあります。高齢者の場合、意外と難聴者 本人は困っておらず、同居しているご家族が不自由なために補聴器を希望してくる場合が少なくありません。このような方に合わない補聴器を装用させても 「ああ、うるさい」 と言ってすぐに補聴器を使用しなくなり、タンスの肥しになってしまいます。実際には、本人が何度も聞き返すのを困っているのではなく、大声で何度も話す同居人の方がくたびれてしまっている場合が多いようです。 特に高齢男性は要注意です。


補聴器の選択 ‥‥
これを誤ったら、どう調整しても成功しません。

近年のデジタル技術の進歩は、各種メディアで革命的な変革をもたらしました。これらの技術を用いた優秀な補聴器が出現してきたのは事実ですが、 しかしながら、実際に使用に耐えられる機種は、ごくわずかしかありません。現在、日本では約500機種もの補聴器が販売されていますが、1993年に市販されている25メーカー460全機種を調査した ところ、実際に使用できる、と私が判断した補聴器は、わずか1割程度しかありませんでした3〜4)。この頃の補聴器の音は大半が劣悪で、補聴器で聞き取りを向上させるどころか、雑音を与えるだけのものもありました。また、この頃のデジタル式補聴器は、問題が多い割には「デジタル式だから音が良い」などという短絡的な宣伝が横行したりもしていました。以前から音の良い補聴器の必要性を啓蒙し3〜7)、メーカーにも訴え、難聴者がコンサートに行ける程の高品位補聴器を実際に自分で製作したり もしましたが5〜7)、未だに理解できない専門家もいるようです。

しかしながら、1998年頃から本当に性能の優秀なデジタル式補聴器が現れるようになり、2000年1月に行った調査では45機種中18機種が合格しました。
補聴器内部では複雑な信号処理が行なわれていますが、それが実際に正確に音として耳には届きません。最終段階のレシーバーの音が劣悪だからです。ここをしっかり理解し補聴器を選択しなければ、決して補聴器の装用は成功しません。

以下、補充していく予定です。
  

 * 当院は、厚生大臣の定める補聴器適合検査施設基準に適合した届け出施設です。

補聴器特性装置、音場での補聴器装用各種検査機器完備

昭和60年度厚生省主催補聴器適合判定医師研修会・補聴器の部終了

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 「補聴器相談医委嘱のための講習会」
東京都地方部会 講師・実技指導 (平成17年 〜 )


  

    1) 補聴器の調整 〜利用面での調整(うるささの対応) 「補聴器」 日本聴覚医学会 補聴研究会 52-55, 1995.

    2) 「補聴器 Q & A」 金原出版 神崎仁、他編 分筆 2001.

    3) 補聴器の周波数特性(高域)の検討 Audiology Japan 36(5) 311-312, 1993.

    4) Study of Frequency Responses of Hearing Aids      International Congress of Audiology 234, 1994.

    5) 補聴器の高品位化への試み 〜DCアンプの導入により、その可能性をさぐる Audiology Japan 34(5) 341-342, 1991.

    6) 中・高度難聴者に対する新しい補聴器装用の試み 厚生省急性高度難聴調査研究班報告誌, 1992.

    7) Development of a High-Definition Hearing Aid      International Congress of Audiology 209, 1992.

    8) 補聴器の周波数特性表示に関する一提案 Audiology Japan 37(5) 353-354, 1994.

    9) 補聴器の周波数特性のHL表示 Audiology Japan 38(5) 681-682, 1995.

 

神宮前耳鼻咽喉科 クリニック


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