アレルギー性鼻炎・花粉症


イエローストン国立公園にて  撮影:2017年8月

ある物質に対して、体が過敏な拒否反応を示すのをアレルギーといいますが、中でも、スギ花粉によって引き起こされるアレルギー性鼻炎(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)やアレルギー性結膜炎(眼の痒み、流涙)等を総称として、花粉症といいます。アレルギー性鼻炎は、スギ花粉以外にも、ブタクサやカモガヤといった植物の花粉、ダニ、ハウスダスト、カビなどでも起きます。頻度の高い原因物質でも10種類位あり、1年中遭遇する可能性があります。また、クーラーのついている部屋とそうでない部屋を行き来するだけで、くしゃみや鼻水が出てしまうような、気温の変化に追従できない血管運動性鼻炎と呼ばれるタイプもあります。治療をするにあたり最も大切なのは、「自分が何に対して、どの位の強さのアレルギーを持っているのか」を把握する事です。そして、まず、アレルギーを起こす物質から回避するのが、治療の第一歩になります 。

検査について

スギ花粉症があり、5月を過ぎてもまだ症状が続く場合には、カモガヤのアレルギーもあるかもしれませんし、秋口にも症状が出る場合には、ブタクサのアレルギーがあるかもしれません。冒頭に記したように、「自分が何に対して、どの位の強さのアレルギーを持っているのか」を把握する事は、とても大切な事です。また、個人の体質を知る、という事は、治療をする側にとっても、とても助かるのです。例えば、スギ花粉症の患者さんが血液検査を行いアレルギーの程度が弱い事が把握できているとすると、花粉の飛散量が少ないのに症状がおさまっていない場合には、現在服用している薬は効いていない、と判断できるからです。

アレルギーの原因物質を調べるには、大きく分けて2つの方法があります。一つは、腕などに、一般的にアレルギーを起こしやすい物質を各種、ごく少量注射し(針で傷をつける方法もある)、15分後に、赤く腫れるかどうかをみる皮内テスト検査と、もう一つは血液検査です。皮内テストは、一度に沢山の種類の物質について調べられ検査代もあまりかかりませんが、強いアレルギーを持っている方の場合には、全て反応が出てしまい、正確ではない場合があります。また、検査後かなり痒く、不快を伴います。血液検査では、正確に、その強さまで把握できますが、検査代がかかるのと、結果がわかるまで数日を要する欠点があります。当院では、基本的に全例に液検査を行っています。
 

治療法  民間療法も含めると膨大な数になりますので、ここでは、一般的な治療法についてのみ説明します。

抗原からの回避
スギ花粉にだけアレルギーがある患者さんは、春先以外の季節に症状が出ません。これは、スギ花粉が飛んでいないからで、つまり原因物資:抗原に接しなければ、アレルギー性鼻炎は起きないという事です。もし、ダニやハウスダストのアレルギーがある方の場合には、畳やカーペット、ベッド、ぬいぐるみ等の掃除をまめに行えば症状が軽減します。地味なことですが、まず「抗原からの回避」が基本です。

薬物療法
各種内服薬、注射、点鼻・点眼薬などによる治療です。現在、かなりの数のお薬がありますが、それぞれ利点、欠点がありますし、中には全く効かない薬もあり、その選択だけでも膨大なノウハウがあります。当院では、全ての薬剤を院長自ら服用、使用し、その中で厳選したものを症例・症状に合せて処方しています。薬は全て同じではありません。注射による皮下免疫療法(減感作療法)、舌下免疫療法については、下記をご参照下さい。

(注意) シーズン前に1度注射をすればOK、という 「花粉症の予防注射」 なる治療法があります。これは高濃度のステロイド・ホルモン剤を注射するもので、生理不順、注射後の皮膚変形など、さまざまな副作用が起きる場合があります。この注射は、以前から日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会でも行わないよう警告しておりますし、当院でも行いません。こんな治療を行なわなくとも、きちんとコントロールできます。

皮下免疫療法(減感作療法)  《もう少し、詳しく知りたい》
アレルギーの原因物質を極めて薄い濃度から少しづつ注射し、抵抗力をつける治療法です。治療効果が傑出しているので、スギ花粉症を徹底的に治療したい方、通年性アレルギーの方、喘息もある方に向いています。
週1〜2回の通院(注射)で、維持量に達するのに、2〜3ヶ月くらいかかりますが、一旦維持量に達してしまえば、月1回の注射で済みます。当院で最も成績の良い治療法で、半数以上の症例で投薬無しでも、ほぼ症状が抑えられます。当院は、日本で有数の治療症例数があります。

舌下免疫療法  《もう少し、詳しく知りたい》
上記、皮下免疫療法の簡便法です。毎日舌下に服用を3年続けます。成績は皮下免疫療法ほどではありませんが、非常に効果があります。皮下免疫療法に比べ、注射による痛みが無く、より安全ですが、費用がかかります。

手術療法  《もう少し、詳しく知りたい》
手術で鼻の粘膜を一部除去したり、鼻の粘膜にレーザーを照射し、アレルギーを起こす場を減らそうという治療です。レーザー治療が一般的ですが、ただ照射するだけでは治療効果は期待できません。当院は、日本で有数の治療症例数と、膨大なノウハウがあります。

治療効果判定の落とし穴
治療効果の判定は慎重でなければなりません。花粉症の場合には、毎日の花粉の量や、生活環境(例えば昼間 外で仕事が多く、他の人より多くの花粉に暴露する等)で大きく左右されます。これらの事を冷静に客観的に判断しないと正しい判定はできません。新たな治療を試みた年が、たまたま花粉の量が少ない年であったのに 「これは素晴らしい 」 と勘違いしたり、最終的な効果の判定が、すでに花粉が飛散していない頃になされ たりするケースが後を絶ちません。当院では、関東の花粉飛散状況を毎日チェックし、客観的に治療効果を判断しています。

内服で陥りやすい誤りは、「以前はこの薬が効いていたのに、だんだん体が慣れてきたせいか、最近急に効かなくなった。別な薬に替えてもらったら効いていたが、また同じように効かなくなった」というもの。これは単純に大量飛散の時に症状が出て薬を替え、その後数日花粉が飛散せず症状が治まり、また大量飛散で症状が出ただけです。意味の無い迷走ではなく、きちんと効果のある薬の選択が大切です。

  

神宮前耳鼻咽喉科 クリニック


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